本記事は2010年6月時点での内容になっております。
2014年8月現在、茨城マッシュルーム生産組合から、芳源ファーム有限会社に生産が引き継がれています。
農業組合法人「茨城マッシュルーム生産組合」は1979年に12軒の農家によって設立されました。肉厚で日持ちのするというマッシュルーム生産は、実は日本中央競馬会のトレーニングセンターの設立とも深く関わっていました。それまで稲作、れんこん栽培が主だった美浦村で生産が盛んになったマッシュルーム。 競走馬との関係は、「エコ」で結びついたのです。出荷販売部長の中嶋研一さんがその秘密を明かしてくれました。
栽培にはワラが必要、そこでトレセン
-マッシュルーム栽培を始めたのは、どのような観点からですか?
中嶋さん 美浦村にはJRAのトレセンがあり、そこでは大量の敷きワラが出ます。そのままでは大量の糞尿公害になってしまう。それをマッシュルームの菌床に利用できないかと考えたのです。敷きワラは栄養価も高く、一括して完熟たい肥化することで、栽培用の菌床になります。
-元々はマッシュルーム栽培は行われていなかったのですか?
中嶋さん 理事長の浅野克己はここが出来る前から栽培していました。設立時には元村長を始め美浦の有志が集まり、組合として栽培を始めたのです。現在は組合員5人ですが菌舎30棟で年間約200トンの生産をしています。茨城はマッシュルームの栽培では全国3位にあります。
根付きで他県産と差別化図る
-菌床に馬の敷きワラのコンポストを使うのはアイデアですね。
中嶋さん トレセンのたい肥を使ったものはほかにもあり、美浦村では「味の玉手箱」として農作物をブランド化しています。マッシュルームはその中でも中心的な存在ですね。また、私どもは根付きのマッシュルームでほかと差別化しているのです。
-根付きの特徴はどのようなものでしょう。
中嶋さん マッシュルームは手で触ると非常に傷みやすいのです。収穫時になるべく手で触れる回数を減らすために根付きにしました。しかし、それだけではなく根付きの場合日持ちが良くなるのです。ほかのものと比べて2~3日は違います。遠方に送ることも可能になったのです。
徹底した衛生管理で品質保つ
-マッシュルーム栽培の難しさはどのようなものですか?
中嶋さん マッシュルームは床を詰めて種をまいて40日ぐらいで収穫します。その間の温度管理が一番大切です。また、病気も怖いですね。蚊やハエといったものもシャットアウトしています。農薬を使えないので雑菌がハウスの中に入らないように、消毒など衛生管理は欠かせません。
-すべて手作業ということで作業も大変ですね。
中嶋さん 収穫、パック詰め、箱詰めまで一貫して手作業になります。サイズも13種類ほどに分けてパック詰めしますので、慣れも必要です。現在は菌舎もフル稼働して休む暇もありません。
消費拡大への模索
-消費者にはマッシュルームは高いというイメージもありますが。
中嶋さん 冬場に需要は増しますが、夏場は価格も下がってきます。これは、消費者がマッシュルームの食べ方をあまり知らないからです。新鮮なものは生野菜サラダとしても食べられます。また、加熱し、それが冷めてしまってもマッシュルームは味が変わりません。また、根付きのマッシュルームは足の部分も食べることが出来ます。混ぜご飯などにしてもおいしくいただけます。
-マッシュルームの食べ方もPRしていくのですね
中嶋さん マッシュルームは料理の脇役的なイメージもありますが、いろいろな食べ方があります。マッシュルームをメーンにした料理の提案もしています。より多くの人が気軽に食べてもらえるようさまざまな場面でPRしていきます。
【取材録】
茨城のマッシュルームは千葉、岡山に次いで全国3位の出荷量を誇ります。その中でもトレセンから出る敷きワラを菌床にしてマッシュルームを栽培し、栽培後は野菜や稲作の土作りに活用するという循環型農業が行われていました。たい肥が完全に分解され、無臭で衛生的な菌舎の中では、無数の白い頭が出荷を待っていました。