茨城県西部はハクサイ産地として、国内有数の規模を誇ります。冬の鍋物に欠かせない存在である一方、漬け物としても一年を通して消費される便利な野菜です。茨城白菜栽培組合(岩瀬一雄社長)は漬け物用のハクサイの調達と独自ブランドの「霜降り白菜(R)」の販売を手掛け、国内各地の生産者に資材、技術の無償提供を行うフランチャイズシステムを確立。「Soil to Soil(土から土へ)」を標ぼうし、ハクサイを安定供給できる農業生産法人としてメーカーなどの絶大な信頼を得ています。
ハクサイ生産のカリスマ・岩瀬一雄社長
-この辺はハクサイ栽培はいつごろから始まったのですか?
岩瀬さん 約70年前から、ダイコン、ハクサイの栽培が行われていました。利根川や鬼怒川などによる土壌も生産に合っていたようです。私もダイコンを栽培していまた。それが漬け物メーカーに頼まれて、納めるようになったのです。それから30年ほど前からハクサイ栽培に取り組みました。漬け物メーカー側は安定して量がほしい-というので、それに応えるために、栽培農家を見つけて協力してもらうようになったのです。
-ハクサイ界の首領(ドン)としても著名ですね。
岩瀬さん それは栽培する農家への技術指導や資材の無償提供なども行っているからでしょうか。契約農家へは土壌分析も組合で無償で行い、出荷するコンテナや箱なども提供する。組合には土壌や病害虫の専門家もいます。彼らが常に畑を巡回して、ハクサイの品質の均一化に努めています。そのため、メーカーやスーパーなど取引先から情報を得た媒体などで紹介されたからでしょう。
FCシステムの特徴
-組合の行っているフランチャイズシステムは具体的にどのようなものですか?
岩瀬さん 契約すると基本的に全量買い取ります。契約農家の畑から直接、メーカーやスーパーなどの顧客へ届けます。資材、技術提供は安定した品質提供には欠かせないものです。生産方法、取引量、価格の面で契約しますが、ロイヤリティを取るような一般的なフランチャイズとは形態が異なりますね。
-現在、どのくらいの契約農家があるのですか?
岩瀬さん 主に関東甲信越地域を中心に160軒と契約しています。農作物は天候に左右され、市場の相場に左右される面もありますが、生産者が売れる単価でいかに供給できるかという点で価格を決めます。年間通してメーカーには一定の単価で納めなければなりません。野菜価格が高騰するときもあり、生産者として市場へ出したいという時もあるでしょうが、将来を見据えてもらいたい。そのために、組合が苗まで提供するなど手取りが少なくても出費が少なくする努力をしているのです。
年間供給とオリジナルブランド
-ハクサイは季節野菜のイメージがありますが。
岩瀬さん メーカーには年間通して納めなければいけません。この辺は秋冬ですが、夏場は長野、山梨、北海道などの契約農家から出荷しています。しかし、どうしても端境期ができてしまう。そのため、個人農家では作れないような冷蔵庫などの設備も完備しています。また、北海道から種子島まで土壌や肥料などをテストして栽培の可能性を探っています。かつては中国でも実験しました。
-漬け物以外のオリジナルブランドもお持ちですね。
岩瀬さん 独自に開発した「霜降り白菜(R)」があります。種苗会社と共同で開発したもので、鮮やかな黄芯が特徴で、食味に優れたものです。浅漬けやキムチはもちろん、和洋中華や生食やサラダにも最適です。テレビの料理番組やワイドショーなどにも再三取り上げてもらっています。また、大手外食チェーンの食材としてのキャンペーンも行ってもらうなど、徐々にブランドとして認知されてきました。
今後の課題と対策
-量と価格の安定供給という面での課題は?
岩瀬さん 直売所など競争は激化しています。変化を捉えて先を見据えることは大切です。農家は高く売れるときのことを夢見ていても仕方ないです。いかに安定した収入を得るのか、先々、農業を続けて行くために将来を考えることが大切です。どんなにハクサイがないときでも、安定供給するのが私たちの使命です。技術面ばかりでなく経営の指導も重要です。
-高齢化も問題になっているのでは?
岩瀬さん これはフランチャイズの魅力の一つでもあるのですが、契約農家の方々は60代から70代になっていますが、冬場の雪の季節は長野などの農家は収穫ができません。そのため、高齢化で収穫ができない埼玉などの農家へ、長野の農家が収穫を手伝いに行くなどの人的支援が行えます。契約農家同志が協力して生産を下支えするシステムで乗り切っています。
【取材録】
岩瀬社長はその人柄から漬け物メーカーからダイコン・ハクサイの安定供給を頼まれ、その信頼に応えるように規模を拡大させ、現在の地位に登り詰めました。「きゅうりのキューちゃん」でおなじみの東海漬物を主に、キムチ用などのハクサイはほとんどが茨城白菜栽培組合を通じて供給されたものです。市場や問屋などを通さず、新鮮なものを畑から直接配送することでコストも削減。顧客・生産者が「WINWIN」の関係を築きあげた農業FCは、次代の農業の在り方を提示していました。
ホームページ/http://www.hakusai.co.jp