この夏、茨城の果樹生産農家に大きな衝撃が走りました。本場・宮崎県産マンゴーより、茨城で出来たマンゴーのほうが美味しいー!野菜・果樹など北限・南限は茨城と言われるものの、南国特有のマンゴーが生産でき、しかも日本一と呼ばれる宮崎産を上回るマンゴーが生産されているとは。早速、生産者の保田さんの農園を訪れました。
花き栽培から果樹に挑戦
-茨城でどうしてマンゴー栽培をしようと思ったのですか?
保田さん 私は42年間、花や鉢ものをやっていました。還暦を迎え、息子にこれを譲りました。仲間に胡蝶蘭を作っている人がいて、その方がマンゴーを作っていて、そこから苗をいただいてきて、趣味でマンゴーを育ててみたらたまたま良く出来たのです。「これはできる」と確信して、昨年から本格的に取り組んでみることになりました。第2の人生は「(花の)視覚から(マンゴーの)味覚」になってしまったのです。
栽培のノウハウ
-茨城でマンゴーを栽培するのには技術的にも大変だったのでは。
保田さん 沖縄から2年目の苗を買ってきて、本来なら3~4年は枝を育てることが必要なのですが、私のところでは3年目で実をならします。冬の2月に花芽が出て、3月ころにミツバチやアリ、銀バエなどによって交配させます。その後、ひと枝にひとつの実をならせるようにするのですが、摘果の見極めが一番難しいですね。これは大きくなるだろうと思っても、結果が悪かったりします。ほかの産地と違って、収穫も8月までと遅いのが特徴です。(販売期間は7月10日頃〜8月20日頃まで)
小美玉産マンゴーを「小美玉SUN」と命名
-本場の宮崎産との違いはどこですか?
保田さん 宮崎は地植えですが、私のところはBOX栽培です。しかも有機でやっています。ここは宮崎と違って寒暖の差も大きいところです。そこらへんは花きをやっていた経験が生きています。宮崎の完熟マンゴー「太陽のたまご」は糖度15度からと言われていますが、私のところは18.5~20.5度と上回っています。お客さまからも「宮崎や沖縄より甘くて美味しい」と好評をいただいています。また、沖縄や鹿児島といった産地は台風によって全滅してしまうことがありますが、ここはハウスで守られているので、収穫にばらつきが出なく、安定供給することのできるメリットもあります。みなさんは「小美玉マンゴー」と言っていますが「小美玉SUN」と名付けました。
口コミで広がる販路
-これだけ貴重なマンゴーですが、価格はどのように設定されていますか?
保田さん 100g1000円が基本です。今は50鉢ほどしかありませんので、生産量はそれほどではありません。贈答用に予約注文を受けていますが箱代などは無料なので、宮崎産などと比べてとても安い価格です。水戸や日立などのケーキ屋さんなどからも「傷モノでいいから」と注文を受けていますが、1~2週間待たせてしまうことがあります。でもお客さまは「その待っている時間が楽しいのです」と言われます。それほど待ち望んでいてくれるのですね。
新商品開発にもチャレンジ
-マンゴーにも色々と種類があるのですね。
保田さん 「幻のマンゴー」というものがあります。これは2キロほどもある大きなマンゴーなのですが、ものすごく美味しいのです。普通のマンゴーは自然に落下しますが、これは切らないと収穫できないのです。しかもその後、水の上に2週間ほど置いておかないと完熟しないという手間の掛かるものです。本場沖縄などでもほとんど作られなくなってしまいました。そのようなマンゴーも作っています。茨城でマンゴーが出来るなんでだれも信じていませんでしたが、これからも美味しいマンゴーを作り続けたいですね。
【取材録】
試食させていただいたやすだ園のマンゴーはクリームのような食感で、程よい酸味の効いた甘さが上質です。レストランなどではマンゴーにレモンなどを沿えるところもありますが、保田さんの作るマンゴーはそのままで味わうのが最上の楽しみ方。長年にわたる花き、鉢物の花の栽培に取り組んできた経験が、日光の当て方、ハウスの開閉のタイミング、水の管理、有機のバランスなど栽培技術に結実しています。保田さんは今度は鉢植えのサクランボ作りにも取り組んでいるそうです。サクランボは来年から本格出荷するそうです。鉢植えのためイベントなどへも出張可能。ホテルの会場でサクランボ狩りを楽しめる時代が来るかもしれません。