COLUMN 01 未来農業報告書

HOMECOLUMNCOLUMN01 > 既成概念にとわられない。コセガレではないからこそ、できること。

「6次産業化」に対する新たな発想

2年前に異業種から農業の世界にキャリアチェンジした、つくばみらい市のグリーンアートの代表・阿部昌由さん。トマトの栽培に加え、農産物・農産物の加工品を扱う店舗の立ち上げ、さらには自身のトマトを使って加工品を開発するなど、いくつもの顔を持つ。これまでの常識にはとらわれない、阿部さん独自の事業展開についてお話をお聞きしました。

すべてが偶然から始まったトマト栽培

 代表の阿部さんは、以前は不動産業や飲食業に就いていました。しかし、二十歳の頃から、三十歳になったら自分の飲食店を開く構想を持っていたようです。農業に携わりたいと思っていたのは、阿部さんではなくお父さんでした。ある偶然から、農業をやらないかという話が持ち上がり、偶然もチャンス。阿部さん自身が始めてみようと思ったのです。でも今から農業を始めるのなら、差別化をしないとやっていけない。そこで、まずはトマト専業で行こうと決めました。材料から加工品まで一連の流れを自身で行うことも、大きな差別化になると考えました。

品種や生販一体の仕組みで差別化を図る

 トマト専業ですが、偶然の流れでトマトに決まったというだけ。新規で始めるのであれば、技術の要る大玉トマトでは歯が立ちません。そこで、現在の消費者のニーズや、差別化が図りやすいことなどの面からミディとミニに絞りました。ブログのタイトルに「トマトとの8760時間」と付いていますが、これは365日分の時間数、すなわち1年です。大げさでもなんでもなく、初年度は一年間ずーっとトマトの生長を観察して、記録を付けてきました。気温や気候などとの生長の因果関係など、事細かに記録を付けた一年でした。「どうして? なぜ? 何?」の精神からです。この経験から、栽培歴は若いですが、トマトのことをこれだけ見てきたという自信がついたといいます。栽培方法に関しては、誰に教わるでもなく市販の農業書と目の前にあるトマトが師でした。

農産物の生産から加工プラスα

 農業を始めてから3年目ですが、栽培にとどまらない事業を展開していますが、それがすべて常に走りながらの行動。トマトが作れるようになったら、今度はそのトマトを売る場が欲しい、だから守谷市に農産物とその加工品を扱うアンテナショップ『農かふぇ』を作りました。自分で作ったトマトは生食もおいしいけれど、新たな付加価値を付けるとともに無駄なく使いたいから、冷凍や乾燥技術を考案し別企業とコラボレーションでトマトジュースや万能タレの開発をしました。

人が集う“場”が作りたい

 アンテナショップの名前は「農かふぇ」。「カフェ」と付くから、最初は飲食店だと思っていた方が多かったようです。でも、元々「カフェ」とは空間を楽しむ場所でもある。多くの人が交流する場になってほしいとの願いを込めて付けました。阿部さんが30歳で農業を始めたこともあり、自身のような若手の農業者を応援することもグリーンアートのコンセプトのひとつなので、農かふぇでは、若手の生産者の野菜も扱っています。加工品も全国から集めていますが、農産物と同様にさまざまなコダワリがある面々です。

農業の門戸を広げたい

 今後は、トマトの質をさらに上げることはもちろん、農業界において生鮮品や加工品に対する新規参入のチャンスをつくり、その人たちを応援する活動もしていくようです。阿部さんは、まだ農業初心者とはいえ、この2年半で行ってきた証もあるので、実体験を元に教えてあげられることはたくさんあると思うと語ってくれました。

【取材録】

 生産者、経営者、コンサルタント…、阿部さんの活動は多岐に渡り、今後もそのフィールドは果てしなく広がっていくであろう確固たる自信と、ゆるぎない信念を感じて、農業の未来は決して暗くない、そう思えました。近年は農業と「6次産業化」は一緒にして語られることが多いですが、阿部さんの「6次産業化の成功には『農商工』にひとつ足りません。『伝』です。だから、その伝える役割が大事なんです」という言葉に、自分の職業に責任を感じるとともに、新たな希望を持つことができました。
■株式会社グリーンアート
つくばみらい市上島168-2-2F
TEL0297-44-4831
>グリーンアート/http://3e-yasai.com/index.html

>農かふぇ/http://nou-cafe.com/

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