日本の農業を変えるのは、後継者が帰農するのがてっとり早い―と、農家のこせがれネットワークが設立され、その環が全国に広がっています。そのメンバーのひとりである八木岡さんの農園は、水戸市の市街地を望む、那珂川の沖積地に広がっています。
実家の農業を継ぐ若手就農者たち
-東京からのUターン就農ということですが
八木岡さん 東京の大学を出てそのままITのプログラマーとして働いていました。しかし、物事の価値観が分かってくると、親の作っている作物がどんなにうまいものかが分かり始めた。そして、農業をやりたいと思ったのです。
-こせがれネットワークとのつながりは
八木岡さん 発起人となった宮治勇輔さんとは、立ち上げ前から知り合いでした。農業を始めるのに、同じような境遇の仲間とコミュニティーを取りたいと思っていました。
-帰農することは奥様に反対されませんでしたか
八木岡さん 幸い妻は東京農業大学の出身でした。専門は畜産なのですが、盆暮れには実家にも来ていたので、水戸で農業に従事するのに抵抗はなかったようです。
-八木岡さんのところは親の裕一さんの代からイチゴ一本ですね
八木岡さん 実は父親も、サラリーマンから実家の農業を継いだので、親子2代続けてUターン組です。初めはトマトをやっていたのですが、イチゴを紹介されて始めたようです。今はハウス13棟でトチオトメを生産しています。
-水戸でイチゴをやっているのは少ないのではないですか
八木岡さん イチゴは1年に13カ月やらなければならない大変な仕事です。水戸はメジャーな産地ではありませんが、ここは那珂川の運んだ土壌のおかげで、味の濃さや甘さ、固さなどおいしいイチゴが収穫できます。しかし、市街地で住宅も近くにあることから、消毒などに農薬を使うことができません。そのため、一度畑を水没させる冠水太陽熱消毒という方法を取っています。このため、炭疽菌などの心配は全くなくなりました。
-農家を継いでくれる後継者ができて、お父様も喜んでいるのでは
八木岡さん 1家族でやっていたものが2家族になったので、労働の負担は多少減ったでしょうが、その分収入を上げなくてはいけない。直売したり、こせがれネットのパートナーシップ制度を活用するなど、販路の拡大を目指しています。おかげさまで良い反響をいただいています。
【取材録】
当初は収入がなくても家賃や食費には事欠かないのがUターン就農の利点。さらに地元に知り合いがいて、技術指導も親に教われるという多くのメリットがある帰農には、これから多くの若者が農業に戻ってくるきっかけになるだろう。全国ネットワークの活用など親の代では考えられなかった手法を若手後継者も編み出しており、こせがれネットワークが掲げる「かっこよく、感動があって、稼げる」という3K産業の確立は夢物語ではなくなっているようだ。
■ハートフルファーム 土の香
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