見る目ががらりと変わる。
落花生のはなしです。一般的に広く出回っているのは、お菓子などとしてすでに加工済みのもの。むしろこれしか知らない、という人も多いでしょうか。もちろん、味付けされた落花生はおいしいですが、初めて生の落花生を手にし、調理して食べたときは「何で今まで知らなかったのだ」と、今までの人生を軽く悔やんでしまったほど。生のものと加工された落花生は、別ものだと思ってしまう、といったら大げさでしょうか。でも、それぐらいにフレッシュな落花生の味わいは格別なのです。
全国的に見ると千葉県が有名ですが、県内で最初に栽培を始めたのが牛久市です。牛久市内でも栽培が多いのは女化(おなばけ)地域。「女が化ける」だなんて、字面で見ると怖い妄想もしてしまう地名ですが、おいしい落花生を育む地であるととは間違いないようです。かつては荒地で大砲発射の練習に使われるだけだったのが、千葉県は八街市から落花生の種を分けてもらい植え始めたのが明治時代のこと。現在では落花生だけではなくほかの野菜の栽培も盛んな地域になりました。かつては、この一帯の農家はみな、落花生を栽培していたそうですが、海外から安価な落花生が輸入されたことなどの理由を背景に、栽培する農家は減少しているといいます。
落花生は炒って食べるものという印象がありますが、産地の方に聞くと「ゆでて食べる」という声を多く聞きます。塩ゆでにしたり、甘辛く煮たりしてぽりぽりと楽しむようで、子供の頃によく食べた母の味、懐かしい味として回顧する人も多いそうです。
個人的には、秋になると「ピーナツバターの時期だな」と思うわけです。残念ながら、牛久市産の落花生が一般の市場流通にのって広く出回るということはなく、その多くが加工品に回るのですが、地元の産直所などで手に入れることもできます。この産直所に行くのが毎年の恒例行事。外側の殻をはずすと、身の周りには淡いピンク色の薄皮がぺたり。思わず「かわいい」と口からこぼれ出てしまうほどの、乙女なピンク色なのです。薄皮の状態で40分ほど炒って、薄皮をはずしたらバターとメープルシロップを合わせてごますりですってピーナツバターに。もちろん、塩ゆでにしたり、オーブンで素焼きするだけでも、落花生の本領が分かるはずです。甘みがあって、じわりと中からにじみでるうま味もあって。あとは、どうぞみなさまの舌でご堪能ください。
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