大子町は県内一大産地に
-そもそも常陸大黒はどういう特徴を持ったものなのですか?
菊池さん ベニバナインゲンは夏場気温が高くなると結実しません。そのため北海道などで栽培されていましたが、「常陸大黒」は生物工学研究所が実験の過程で開発した新品種です。真っ黒な皮が特徴で大粒でポリフェノールやアントシアニンといった成分が丹波黒豆の3倍はあると言われています。大きくて栄養価も高い豆なんです。
-夏場冷涼な大子町は栽培に適していたのですね。
菊池さん 最初は旧里美村で栽培実験に取り組みました。大子町はこれまでコンニャク、お茶の生産地ですが、常陸大黒は片手間に栽培することができます。しかも出荷単価が高いので、取り組む農家が増えてきました。
新規に取り組む農家が増加
-現在どのくらいの方が栽培していますか。
菊池さん 2003年に5、6軒で始まりましたが、現在大子町だけで38人が110アールの面積で栽培に取り組んでいます。毎年新規に栽培する農家が増えていますね。
-簡単に取り組むことができるのですか?
菊池さん 新規に始めるには土壌の診断を行います。それで栽培方法の講習会を受けてもらい、ほ場作りから始めます。また、支柱も建てなくてはなりませんが、これはキュウリ用のU字のものを使います。
高齢者、女性での栽培も可能
-栽培はどのようなサイクルなのでしょう。
菊池さん ポットで育て、7月上旬に畑に移植します。8月から9月にはスイートピーに似た美しい赤い花が咲いてきれいですよ。10月ごろからサヤの色などを判断して収穫します。しかし、水を嫌う作物なので栽培には記を配ります。ばい菌の繁殖に気を付け、カメムシやアブラムシなどの害虫から守るためにネットを張ったりすることもあります。
-結構手間が掛かるのでは。
菊池さん 栽培面積が広くないので、高齢者や女性でも栽培は可能です。農閑期の11月から天日乾燥し、豆の選別を行いますが、これは手選別でこたつに入ってできる作業です。2.5センチ以上の「大」、2~2.5センチまでの「中」、2センチ未満の「小」、さらにしわやへこみのある「B」と選別します。大体1アールあたり20㎏平均で収穫することができます。
加工することで品種を守る
-出荷はどのようにされていますか。
菊池さん 収穫された豆は全量JAが買い取ります。「常陸大黒」という価値の高い豆を守るために生豆は他には出さないようにしています。栽培に取り組む方はこれを徹底しています。農協から全農へ納められてからお菓子などの加工業者へと販売されます。
-加工品はどのようなものがありますか?
菊池さん 常陸大黒は栗のようなほくほく感があり加工に適しています。ようかんやどら焼き、蒸しパン、ケーキなどのほか赤飯などにも使っています。新聞やテレビなどで紹介してもらい徐々に知名度は上がっています。積極的にPRは行っており、大子のコシヒカリと常陸大黒をもっと広めて行きたいですね。
【取材録】
常陸大黒は本県オリジナルの豆で、近年その栄養価の高さから健康食品として注目を浴びています。夏場の気温により栽培が限られているため、県北の大子町、北茨城市、高萩市、常陸太田市、常陸大宮市だけの特産品です。栽培農家にとっては高値で出荷できる作物ですが、一方の加工業者にとっては販売単価が高くなってしまうという課題もあります。今後、どれだけ高級感、付加価値を付けて売り出すことができるかが、常陸大黒のブランドを高める鍵となりそうです。
■茨城みどり農業協同組合
久慈郡大子町1267-1
ホームページ/http://www.maroudo.net