土作りをする農業生産者を支援
土壌にはさまざまな微生物が生息しており、それら微生物の力が豊かな作物を育てる重要なポイントとなります。牛久市に本社を置く、ディージーシー総合研究所は微生物の多様性・活性を測定し、その素晴らしい土で育った農産物を消費者の皆さんにご紹介する企業です。土作りをしている農家の匠の技を「見える化」することで、消費者にも生産物の良さを理解してもらう。そのための豊かな土の新指標「Soil」マークを策定し、さらにその対象となる生産者の野菜やお米、加工品の納豆や醤油、ジュースなどの販売支援も手掛けています。
土壌分析の中で微生物の多様性と活性に着目
農学博士の櫻本直美さんが社長を務める同社は、牛久市内のほかに新潟県燕市にもラボを持つ土壌分析の研究会社です。2000年の発足当初は、大学や研究機関による高度な研究成果を社会に還元する目的でさまざまなコンサルティングを行っていましたが、その後、2009年から事業目的をより具体化、土壌分析事業とSoil Projectに注力することになりました。
日本の農業現場では農薬の扱い方を間違ったり、連作障害により豊かな土壌が失われているのが現状です。同社は「良い土」ってなんだろう?-をコンセプトに、土壌に生息する微生物の役割に着目。土壌分析と言えば、今まで肥料成分などを分析する「化学性」と水はけの良さなどを測定する「物理性」にとどまっていましたが、微生物の豊かさを測定する「生物性」についても分析することを可能としました。これにより、農家の土づくりに役立つ、新しい指標を提唱しています。
世界初の微生物の多様性・活性を数値化
同社の技術は独立行政法人「農業・食品産業技術研究機構」、中央農業総合研究センターの横山博士や、岐阜県、新潟県、石川県、長野県、㈱サカタのタネなどの農業研究機関の研究をもとに開発されました。科学的見地から、微生物の多様性と活性を測定する、世界で唯一の企業となっています。
その測定方法は95種類もの異なった有機物(微生物のエサ)が入った試験用プレートに、サンプル土壌を薄めた液体を入れて有機物の分解の速度を測るという方法です。微生物によって有機物を分解する能力が異なりますが、たくさんの種類の有機物が分解できるということは、いろいろな種類の微生物がいるということになり、また、速度が速いということはそれだけ微生物が活発に働いているということで、生物的に豊かな土壌であることを評価できるものです。この分析方法は国際特許にも出願されています。
現場へ足繁く通い収穫も確認
櫻本社長は自ら、土壌検査した農地を巡ることを欠かしません。秋の一日、訪れたのは石岡市内の梨農家でした。そこでは叢生栽培が行われ、さまざまな草が生えている中で、梨木の豊かな収穫を待っていました。
「昔の人は草に栄養が取られると思っていたのです。そのために除草剤をまいてしまうのですが、除草剤をまいたところは周辺環境の生物多様性を下げてしまいます。草を含めた周辺環境を保全することで、土の中の微生物も多様で元気でいることができ、土を豊かにすることができるのです。草も単純化したものではなく多様な草が生えている方が、土はより豊かになります」と、櫻本さん。
豊かな土壌に新指標を
同社が策定した「Soil」マークは、土壌の微生物多様性・活性値が高い豊かな土で育った農作物を見える化するマークです。農薬や化学肥料を乱用せず、多様な微生物の力を借りた土壌から育てられた農産物は、安心・安全はもちろん、とても美味しいです。ディージーシーでは、豊か土作りをしている農家さんに「Soil」シールを配布して、農作物の付加価値にしていただいています。そして消費者の方にも農作物を選ぶ基準として周知していく考えです。
微生物が豊かな土は、団粒構造といって土が玉のような構造になります。触ってみるとしっとりとしていて、踏んでもふかふかで柔らかく暖かさを感じるものでした。
そして、櫻本さんは「自然に任せて何もしないのではなく、人が手を掛けなければならないところもあるのです。田んぼや畑を作ること自体、自然ではないのです。自然に寄り添うということが大切なのです」と、土作りの大切さも強調しました。
【取材録】
豊かな土壌の新指標「Soil」のマークは団粒という土をイメージしたデザインです。「Soil」対象の農地で生産された農作物は単に、有機栽培という意味ではなく、生産者や農業の土作りに対する認識の高さを示すものです。科学的見地から農業へアプローチするディージーシーは日本のみならず、世界の農業の在り方を変える存在になりそうです。
■有限会社ディージーシー総合研究所
牛久市田宮町321-3
029-896-4602
>ホームページ/http://dgc.co.jp