Kamosが取り組む炭素循環農法とは
炭素循環農法(以下、たんじゅん農法)とは、肥料と農薬を使わずに、土中の微生物の力を最大限に活かして作物を栽培する農法です。ブラジルが起源のこの農法では、微生物の餌となる落ち葉や木屑などを土に撒き、微生物たちを増やし、共生させることで、病気や虫の被害がなくなります。また、連作障害もおきません。
無施肥・無農薬栽培というと、収量が少ないイメージがありますが、その土地に合った正しい手順で取り組めば、慣行農法と同量の収量、もしくは増収も見込めます。当然、生産コストは抑えられ、自然環境保全にもつながります。そのような栽培方法で作られた作物の味は、すっきりとしていて滋味にあふれています。
このたんじゅん農法に取り組んでいる、笠間市のKamosの3人にお話を聞いてきました。
笠間から日本全国へ、そして世界へ。
たんじゅん農法を伝える。
Kamosは、大橋正義さん、横山慎一さん、照沼康生さんの3人で活動する農業団体で、たんじゅん農法でいちご、小松菜、ほうれん草を栽培し、畑での直売、スーパー(笠間や水戸のカスミ)、イベントなどで販売しています。元々サラリーマンをしていた3人ですが、たんじゅん農法の魅力に惹かれ、農業を営むことになりました。
たんじゅん農法に取り組んだきっかけを聞くと、「儲かるから」と代表の大橋さんが即答しました。
「儲からないと誰も話を聞いてくれませんから。農家の人に『ダメだっぺ、おめぇ』と言われて変人扱いされて終わってしまいます。変人でも何でもないので、貴方もやってみてくださいと」
大橋さんが話すように、たんじゅん農法に取り組む農家は、全国でも100人程度しかいません。Kamosの活動は、作物を栽培することだけに留まらず、いちご狩りやイベントを通して、農法を伝えることにも力を注いでいます。伝える相手は、消費者だけでなく、生産者も含まれます。
Kamosで働く以前は、農業の経験が全くなかったという照沼さんが言います。
「この農法が10年後には慣行農法になるようにしたいので、農業者でも一般の方でも、人に伝えられる場であれば積極的にお話するようにしています。笠間から、茨城から、全国から世界へと、発酵の世の中になっていけば」
照沼さんは人のつながりでたんじゅん農法と出会い、実際に農業に従事することになりました。その広がり方は土中で微生物糸を伸ばしながら増えていく、微生物の世界と似ています。
Kamosの「人に伝える活動」を主に担当しているのが、横山さんです。
「『変える』のではなく、いつの間にか『変わっている』のが理想です。本当にいいことは、勝手に広まっていきますから」
微生物のお世話係
横山さんと大橋さんは脱サラ後に、それぞれ別の場所でたんじゅん農法に取り組んでいました。そして、たんじゅん農法の講習会で二人は出会い、そこに照沼さんが加わり、3人でKamosとしての活動がスタートしたのが約1年前。1年やってみた感触は、「いける」。
「一年目の目標は、まずは慣行農家並に収量をあげることでした。いちごは40パーセントくらいしか採れませんでしたが、葉物に関しては100パーセントに近い収量をあげることができました」
横山さんの感覚でいうと、たんじゅん農法での栽培は、「野菜を作る」のではなく「微生物のお世話をする」こと。農薬で微生物を「殺す」のではなく、「生かす」という仕組み、サイクルを作り、「そのやり方、いいね」という農家が増えて、自然に全国に広がっていけば、農業が変わっていくと考えています。
果たして、Kamosの取り組みが日本の農業を変えることができるのでしょうか? 最後に、大橋さんが今後の農業について語ってくれました。
「今までのやり方を続けていても、どこかで絶対に息が詰まると思います。他と同じことをやっていて、農業人口が減っていて、働き手の多くは高齢者です。その理由を考えた方がいいですよね。楽しんで、農薬も使わずに農業ができるというやり方を広めれば、若い人たちも農業に帰ってくると思うんですよ」
【取材録】
取材中に「食べてみてください」と手渡されたのは、いわゆる雑草。「微生物に育ててもらうと、雑草すら美味しく育つんです」と言われ、いぶかしげに雑草を口の中に放り込むと、葉物にある「えぐみ」が感じられず、本当に美味しい。思えば、「雑草」とは人の都合で付けられた名であり、れっきとした植物です。Kamosの活動を取材して、似たような感覚に度々とらわれました。今までの観点を覆し、「本来あるべき姿」を追求し伝達する姿を見て、農業に限らず、もっと大きな意味合いで、再考する必要があると感じました。
■Kamos
笠間市本戸2295
090-3875-2693
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