農作物の付加価値を高めるために「つくば分析センター」の果たす役割
農作物に含まれる残留農薬は厚労省が決めた基準値によって、含有量が厳しく制限されています。食の安全はだれもが気にするところですが、その裏付けを取るために「つくば分析センター」など分析専門の会社によって日々、検査が続けられています。生産者がいわば「お墨付き」を得る現場を訪れてみました。
口に入れるものはすべて分析
つくば分析センターは今年1月に会社が設立され、4月から本格的に事業を始めた新しい会社です。検査するのは野菜、果物などの農作物に限らず、加工品、健康食品、はては和菓子を食べるへらまで、人が口にするものすべてが対象となっています。また、土壌や水質、細菌の検査まで対応できる設備を備えています。
検査は農薬が使用されたかどうか分からないものや、近くの畑などから「ドリフト」と呼ばれる意図せずに農薬が掛かっている場合の検査「多成分一斉分析」や実際に使用した農薬だけを検査したい、輸入食品の命令検査項目だけ検査したい-といった要望に応える「個別定量検査」などニーズに応じた検査を実施しています。
残留農薬はもちろん栄養成分、添加物などの分析が可能です。また、個別の定量分析では最大800種類の分析も行い、しかも3~5営業日で結果報告するというスピードも目を見張るものがあります。
同社の土橋幸司営業部長は多成分一斉分析では「農作物は宅配で送ってもらい1キロを単位に分析します。対象作物ごとに残留基準が設定されている農薬を中心に、200項目の検査結果を報告します」。しかも検査費用も5万円が基準で、リーズナブルな印象を受けます。
分析は野菜をペースト状にしてから溶媒を加えて農薬成分を抽出、さらに濾過し、野菜の色素・油分を取り除いて分析機械にかけるという手の込んだ作業が行われます。最新の分析機は3台そろえ、検査体制は万全。
土橋部長は「最近はペットフードも基準ができました。人もペットも食品の安全検査ばかりではなく、健康志向で栄養分析が必要になっています」と言います。安全な食品に対する消費者の意識の高まりは一層増していくのでしょう。
一方、農作物の出荷や加工品の安全確認のための検査だけではもったいないのではと、土橋部長は分析結果の利用方法も提案します。「折角検査しているのですから、積極的にアピールし、商品に付加価値をつけるべきでしょう」と検証結果を商品とともに知ってもらう大切さを強調します。
そのため同社は検査結果をインターネット上で顧客が自由に閲覧できるシステムを構築しました。スーパーや直売所などに来るお客さんがQRコードなどを読み込んだ携帯電話などから検査内容を見られるようにするというものです。
「流通や外食産業などで科学的なデータを開示することで、食品の安全性をアピールでき、販売促進にもつながる」と土橋部長。
分析に販売促進支援という有効性をアピールすることで、「つくば分析センター」はエンドユーザーの視点を見据えているようです。
【取材録】
ベンチャー企業として立ち上がったばかりの「つくば分析センター」ですが、白衣を身にまとった若いスタッフたちが生き生きと分析作業に取り組んでいる姿が印象的でした。会社の使命として、人の健康や食品の安全を願う気持ちが社員の皆さんに染み込んでいるのでしょう。食品については一般の消費者には国内産は安全だという意識があると指摘されました。ともすれば輸入商品に不安を感じますが、輸入食品はほぼ完璧に成分分析されており、むしろ安全と思われている国産の分析がおろそかになっているのでは、と言うのです。国内で発生した口蹄疫問題や無登録農薬の使用など、分析会社が果たす役割はさらに重要性を増すことでしょう。
■つくば分析センター
つくば市千現2-1-6
つくば研究支援センターD-22
>ホームページ http://www.tacnet.jp