いも、くり、かぼちゃ。
女性や子供が好きな食べものとして挙げられるこの3つ。この3種類の生産量トップ3すべてに茨城県が入っています。いも、といってもさつまいも。平成20年のデータでは、国内の生産量第2位、全体の17%を占めています。丸ごと蒸したり、焼いたりと単純な調理法でも楽しめるのが、さつまいものいいところでもあります。割ると、黄金にも見える黄色が目に飛び込んでくる。口に入れるとほっくりとして甘く、まさに口福。こうして文章を書いて、食べるその瞬間を想像するだけでも、思わずにんまりしてしまうほど、その幸せな味は何にも代えがたい存在です。
県内では、広範囲で作られていますが、ひたちなか市での栽培も盛んです。青果用のさつまいもももちろんですが、特筆すべきは干しいも。ひたちなか市の農業産出額の、なんと6割弱が干しいもだというから驚きです。青果用のさつまいもの17%をはるかに超える、その数字。それもそのはず、日本での干しいもの約8割が、ここひたちなか育ちなのです。全国各地にいる、干しいも好き好きなら一度は“ひたちなか”という文字をどこかで目にしたことがあるはず。そう言い切ってしまえるほど、“干しいもといったらひたちなか”はもはや常識なのかもしれません。
元々は、農閑期の副業として始められた干しいもづくり。水はけのよい火山灰土壌が、さつまいもの栽培に適していたことに加え、干しいもを作る冬に晴れる日が多いこと、さらに冬場の乾燥した空気が、干しいもを作るのにうってつけだったようです。
青果用としては、日本で一番栽培量が多い品種、紅あずま。干しいもなどの加工用として、玉豊や紅こがねといった品種が作られています。干しいもには玉豊を使うことが一般的ですが、濃厚な甘みがある泉や、オレンジがかった色合いが美しい紅姫という品種も干しいも用に栽培されています。一般的なスライスしたものに加え、丸のまま干したものなど、干しいも、と一言でくくれないほど、バラエティに富んでいます。生のさつまいもを調理して、ほくほく感を楽しむ。干しいもでねっとりと濃厚な味わいを楽しむ。ひたちなかのさつまいもは、さつまいものさまざまな顔を私に教えてくれました。※写真は紅あずまです。
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