茨城県を代表する果物のひとつ、栗。
茨城県の栗の収穫量は、全国で一位。平成20年度のデータでみると全体の約24%、4分の1を占めています。生食用のほか、加工用として出回ることも多く、他都道府県の名産品がじつは茨城県育ちの栗、ということもあるかもしれません。
おもな生産地は茨城県のほぼ中心に位置する、かすみがうら市と笠間市。栗はやせた土地でも育ち、茨城県以外の地域では、山の傾斜地を利用しての栽培が多く、茨城県のように平地をぜいたくなまでに利用しての栽培は珍しいといいます。ほかの作物同様に、関東ローム層という保湿性通気性に富んだ土質と、温暖な気候が栗の栽培に適しています。茨城県での栽培の開始時は定かではないものの、非常に古くから栽培が行われていたようです。
つくば市に農業研究センターを有する関係で、茨城県で育種した品種は非常に多く、現在国内で一番栽培量が多いのが「筑波」。栗は自然にまつわる名に関する品種が多く、筑波山の別名「紫峰」も存在します。茨城県の地名を冠した栗が多くの人に幸せを呼んでいるかと思うと、なんだか誇らしい気分になるのです。
栗はおもに9月~10月にかけて収穫する、秋の味覚。夏が終わりを告げ、世の中では切なさが漂う頃、大の栗好きの私は「あ、栗が食べられる」とにんまり。とはいえ、日本の栗は大粒で食味がいい反面、皮がむきにくいという難点もあります。この理由ゆえか、栗の消費量は落ちているといいます。この栗離れを危惧することから、偶然見つかった皮がはがれやすい品種「ぽろたん」を栽培も増えているとか。また、多くは収穫してすぐ出荷しますが、1ヶ月ほど貯蔵して甘みを増した栗を「極み」と称しての販売も、2009年から試験的に始まっています。
栗はあまり品種を明記して売られませんが、じつは多くの品種があります。個人的には、これまた茨城県で育種された「石鎚」にほれています。10月上旬に出回る中生種で、ほくほくの粉質で甘みがあり、何より鬼皮が薄くてむきやすいことも魅力のひとつ。
多くの栗を育て、送り出している茨城県ですが、その量に比べて栗を使ったお菓子はそんなに多くないのも事実。栗の消費量は減ってはいるものの、その反面、栗には熱狂的なファンがいることも事実です。茨城そだちの栗のお菓子を待っている人が、きっと多くいるのでは。そう願い、お菓子を待ち望む一人が、ここにもいます。
※写真はかすみがうら市育ちの石鎚です。
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