先陣を切る。
メロンは夏の果物かとばっかり思っていたら、いつしか“春メロン”なる言葉も存在していました。いまや、茨城県のメロンは4月から食べられるのが常識となっています。その先陣を切るのがオトメメロンです。その年の気温などにもよりますが、4月上旬から出回り始め、5月の終わりとともに出番を終え、アンデスやクインシーメロンへとバトンを渡すメロンのリレーが続いていきます。
このオトメメロン、勝手に“乙女”メロンだとばかり思っていたら、OOSHIMA TAKII ORIGINAL MELON の頭文字からきているのだとか。県内にある大島種苗店とタキイ種苗が合同で品種開発に取り組み、その結果、世に出た品種なのです。1995年に新たなメロンが誕生し、3年間旧・旭村(現・鉾田市)で試作が繰り返され、1999年にオトメメロンと命名。2000年から出荷が始まった、メロンの中では比較的新しい品種です。
アンデスメロンにも似た外観で、淡いグリーンの果肉。さわやかな甘さで食べ手の評判は上々。とはいえ、早生種ということで定植や交配の時期がまだ寒い時期ということがネックなのです。暖かい時期に比べると交配がうまくいかないこともあり、作り手からしてみると、どうしても手が出しにくいというのも本音なのだそうです。鉾田市近辺では、クインシーやアンデスの栽培が多く、オトメメロンの出荷量は全体の1割程度です。
最近では野菜・果物を外見だけでは選ばないという人が増えています。それはとってもいいこと。多少見てくれがよろしくなくたって、生育不良なわけでも、ましてや味に影響がないものが大半です。とはいえ、時代とは逆行しているようですが、網目をまとったメロンに関しては美人を選ぶことは間違いではありません。網目がきれいなものは、順調に育った証であり、中身が充実しているということになるのです。
今年は交配の時期にあたる1月下旬が比較的暖かかったこともあり、オトメメロンの生育は順調。大玉で味がのったものが多いといいます。とはいえ5月下旬の今、オトメメロンの旬はもうそろそろおしまいです。今食べなかったら、また来年までおあずけです。「もう少し値段が下がるのを待つわ」は、オトメメロンには通用しない時期になっていることをお忘れなく。
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