京菜もとい、常陸菜。
いえいえ、ほんの冗談です。もちろんこの野菜の名前は、京菜であって、みず菜です。京都で生まれ育ち、かつては京菜と呼ばれていたこの野菜は、平成12年ごろからほかの地域でも作られるようになり、一気に全国区に。この10年で、これほどまでに食卓に浸透した野菜は、ほかにないのではないでしょうか。いつしか京菜という名前ではなく、みず菜と呼ばれるようになりました。ほかにも葉の形がヒイラギに似ているから柊菜、などと別名も多く存在します。
なぜ“常陸菜”なんて呼びたくなってしまったかというと、出生地の京都府を抜いて、いまや茨城県がダントツ一位の生産地だから。なかでも、鉾田市近辺での栽培が盛んです。メロンやさつまいもなど、ほかにも有名な作物は多いのですが、みず菜の存在も知っておいて損はないはず。この地で作られるメロンの味のよさは広く知られるところですが、栽培に時間も手間もかかるのも事実。生産者の高齢化にともない、メロン以外にもう少し手がかからず栽培できるものをと探しているときに、偶然選ばれたのがみず菜でした。この栽培が始まったのは10年ほど前のことです。
シャキシャキとした食感が好まれているみず菜ですが、某食品メーカーがみず菜を使ってCMを打ったことも後押しを、急激に人気が出たのだといいます。このときが、鉾田市で栽培が始まった頃とほぼ同時期という強運の持ち主のこの地域。当初は、ほんの2、3人だった生産者も、いまでは200人ほどというから、その生産量の多さは人数からもお分かりでしょう。なお、施設栽培を行うことで今では一年を通して出荷され、北は青森県、南は大阪府の辺りまで茨城育ちのみず菜が運ばれています。
生でシャキシャキとした食感を楽しむもよし、加熱して少しくたっとしたものをたっぷりと堪能するもよし。お鍋に使うだけでなく…なんて食べ方の提案などは、もはや必要なし!? それほどまでに、食卓に浸透している野菜のひとつに成長しています。
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