ピーマンは春に食べたい。
もちろん、暑い盛りに実を太らせるいわゆる夏野菜のひとつですが、食味のうえの旬のひとつが春なのです。暑い時期はその高い温度ゆえに、速いスピードで育ちます。逆に、冬から春にかけてのピーマンは、育つスピードこそゆったりなものの、それゆえ甘みを貯え味が濃いものが多くできるというのです。これはトマトと共通しています。ほかの野菜と比べて、品種や季節ごとの差は感じにくいかもしれませんが、じっくりとかみしめてみると、ピーマンにうまみや甘みを、より感じられるかもしれません。
茨城で育てられない野菜の方が少ないのでは? と思うほどに、この地で育つ野菜の多いこと。ピーマンも例にもれることなく、全国的にみても茨城での生産量が多いのです。夏秋に収穫されるピーマンは、出荷量第1位。冬春ピーマンも宮崎県に次いで2位。とはいえ、全体量に対して茨城県の出荷量が占める割合は、前者が16%、後者が29%(ともに平成18年度のデータ)。出荷量も2倍近く後者が多いことからみても、冬から春にかけての茨城県産のピーマンの存在感が大きいことが分かります。
県内では神栖市近辺での栽培が盛んです。鹿島砂丘とも称されるように、砂土が多くを占め、太平洋と利根川に挟まれた海洋性気候であることも、ピーマンが育つのにうってつけだといいます。かつては、米や麦、すいかなどがメインだったこの地。旧波崎町では、戦後直後の昭和23~24年ごろに、米軍のリクエストもあって栽培が始まったといわれています。当時は、カリフォルニアワンダーという品種が支給されて栽培していました。現在の主要の品種は、大玉で果肉がやわらかな“みおぎ”や、肉厚で形がよい“京鈴”などが作られています。
かつては、子どもの嫌いな野菜のランキング上位に位置していたピーマンも、その地位にはあっさりとサヨナラ。品種改良などにより、独特の香りや苦みが薄れ、食べやすくなっているというのがその理由です。甘みやうまみが際立った春のピーマンなら、なおのこと。ビタミンCやカロテンなど栄養価が高いことは周知の事実ですが、緑のピーマンを完熟させた赤ピーマンは、熟す過程でさらに実を充実させ、ビタミンCやカロテンの含有量もぐんとアップ。昔からなじみのある野菜のピーマンですが、まだまだ知らない世界があるような気がしませんか。
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