和のハーブ。
すがすがしい香りに、思わずこんな言葉をかけたくなります。数少ない日本原産の野菜で、全国各地に自生していました。11月~4月上旬まで出回りますが、春を感じさせる野菜です。地域にもよりますが、関東地方ではお正月のお雑煮では欠かせない存在です。鼻にすっと抜ける独特の香りがあり、料理にアクセントを加える影の立役者です。とはいえ、食卓ではなかなか主役になりにくいのが現状のようです。
このみつば、じつは茨城県で多く作られています。平成20年度の出荷量のデータで見ると、千葉県、愛知県に次いで全国3位の1,970トン。全体の12%が茨城育ちのみつばです。
出荷の形態で大きくに分けると、根を切り落としや切りみつばと、根をつけたままの状態で出荷する根みつばに分けられます。茨城県の中でも南東地区での栽培が多く、切りみつばでいうと、特に行方市での栽培が盛んです。50年以上前から栽培が始まったといいます。行方市は霞ケ浦と北浦に接し、豊かな水と大地を蓄えた地域。主要な産業が農業で、市内で栽培される野菜の品目は、切りみつばを含めなんと60品目以上にも上ります。年間を通して比較的温暖な気候も、作物を育てるのに合っているのでしょう。
なお、切りみつばの茎が白くて長いのは太陽の光を遮断して育てられるから。光を当てずに栽培し、葉が開く頃に太陽の光を浴びさせ、葉が緑化したら根を切り取って出荷するのです。
茎が白くて華奢な印象ですが、カロテンや食物繊維などの栄養素を意外と多く含む骨太な食材。茎のシャキシャキとした食感で食べるのもよし、香りを生かして香りで香りを食べるメニューにしてもよし。和食で使用されることが多いですが、パスタに加えたり、サラダに仕立てたりと、開拓の余地ありの面白い存在でもあるのです。茨城県を代表する、目立つ野菜はもとより、今までみつばに注目してあげなかった自分を反省。地元で育ったみつばを手に、おいしくいただく方法をあれこれ思案するのも、また楽しい悩みです。
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