由緒正しき、橙色の選ばれしモノ。
庭木としてかきの木が植えられている家庭もそこここにありますが、茨城県は甘がき栽培の北限です。なかでも、石岡市育ちのかきはちょっと違う。何を隠そう、石岡市の富有という品種のかきは、昭和30年ごろよりずっと皇室へ献上され続けているのです。“献上”と聞くと、思わず姿勢を正したくなりますが、それだけその品質が認められた証とあって、同じ県に住んでいるというだけで、勝手に誇らしい気持ちになってしまいます。
ちなみに石岡市を3地区に分け、毎年地区が順番に担当となり、そのなかから柿を選別して献上かきを決めるのだそう。その年の地区の3農家から各60個、計180個のかきが集められ、専門の職員が24個を選出します。180個から24個という数もすごいですが、白い手袋をはめて選出だなんて、そのVIP待遇は言わずもがな。なお、今年は11月17日に献上されるのだそうです。
なお、栽培が始まった時期は定かではありませんが、ずっとずっと昔からとのこと。八郷盆地の丘陵地を利用した栽培が多く、特に富有の栽培に適しているといいます。ほかに最近では太秋や、陽豊という品種も栽培され人気があります。ですが、どちらも栽培量は富有に比べればずっと少なく、見つけたらぜひ買いたい、そんな存在でもあります。9月下旬ごろから西村早生の出荷が始まり、10月に入って太秋や陽豊、そして富有へと移り変わります。
まだ記憶にも新しい、今年の夏のあの猛暑。作物によっては大打撃を受けた気候ですが、かきの場合は降雨量が少なかったために実は大きくはないものの、糖度もしっかりのって味は上々、とのこと。どんな作物も糖度ばかりが注目されがちな昨今ですが、やっぱりかきは甘い方がいい…と、にやり。以前と比べ、かきも品種ごと明記されて売られるようになってきたので、その時期ごとに違った品種の味わいを追いかけ、比べてみるのも楽しいのです。
個人的には、かきはカリカリにかたいものが好み。そのまま食べる、に勝る食べ方はないのですが、焼いてみるのもじつはおいしい。断面をソテーして砂糖をふってカラメリゼして、ラム酒をちょこっとたらすと大人味に。さっとソテーしたものを、水菜やベビーリーフなんかに混ぜてサラダにするのもおいしいのです。塩味にまぎれた、かきの甘み、あなどれません。
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