小さくて大きい濃紫のひと粒。
ブルーベリーは指先で簡単につぶれてしまうほど、小さくてやわらか。でもそのひと粒は、甘くて酸っぱくて、シャクッとしていてジューシーで、と形容詞が幾重にも重なって出てくるほど、充実した果実だと思うのです。
日本では、まだまだ気軽に食べられる果物としての認識は薄いかもしれませんが、ケーキなどのお菓子のトッピングや、ジャムなどで口にする機会は意外と多いのです。そして、このブルーベリーの出荷量の第二位が、ここ茨城県だと聞くと驚く人も多いはず。もちろん、全体の生産量としては、ほかの果物と比べて多いわけではありませんが、この10年でその栽培量などが伸びているのも事実です。茨城県のなかだけではなく、全国的にみてもつくば市は大規模な産地として知られています。ちなみに、ブルーベリーの産地シンポジウムも、今年はつくば市で開催されました。県内では、ほかにかすみがうら市での栽培も盛んです。筑波大学農林技術センターにおける研究データで、つくば市の気候がブルーベリーの栽培に適しているとの発表があったことが発端。もともと芝の栽培が多かったつくば市ですが、芝の需要が低迷し、転作としてもブルーベリーがうってつけだったというわけです。
同市は、平成11年にブルーベリーシティと宣言。補助金などの助けもあり、この10年で栽培面積や出荷量をぐんと伸ばしてきています。市内には、摘み取りを行える農園も数多く存在し、6月~8月にかけて収穫期を迎えます。多くの品種が栽培されていますが、多いのは早生種のハイブッシュ系と、晩生のラビットアイ系。前者は皮が薄くて甘みが強く、後者は小粒ですが香りが豊かと同じブルーベリーでも特徴は異なります。
そのまま食べるだけでも十分に楽しめるブルーベリーですが、ジャムやアイスクリームなど加工にも広く使える懐の広い食材。これからもっと、つくば市のブルーベリーの存在が大きくなるのでは、と小さな果実を前に妄想はふくらむばかりです。
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