食感命。
と言っても過言ではないほど、新鮮なレタスをほうばるときのパリパリッとした食感は、どんな野菜にも勝るとも劣らない、おいしい音を供してくれます。レタスというと、長野県などの高原で育つ印象が強いですが、それは夏の話。春に収穫される、春レタスの出荷量1位は、じつは茨城県なのです。
平成19年のデータでみると、春レタスの出荷量は40100t、全体の3割ほどが茨城育ち。レタスは冷涼な気候を好むので、夏場の栽培は高原などが適していますが、長野県などが気温が低すぎて栽培できない時期こそが、茨城県の出番だというのです。
県内では南西地区での栽培が盛んで、その中でも坂東市が一大産地です。利根川が流れ、南が千葉県・野田市に接するこの地。猿島大地と呼ばれる平坦な土地で、年間を通して比較的温暖な気候です。レタス栽培を行っている地域は、比較的土地が高いことで水がたまりにくく、適度な水分を保てることがレタス栽培に適しているといいます。何より、この地域でのレタス栽培は、道が開通したことに始まります。それでまでは、利根川に土地を分断され、千葉県側へ船などを利用して作物などを運び、輸送に時間がかかっていました。それが一変したのが昭和33年のこと。
利根川に芽吹大橋ができ、千葉県、ひいては東京への交通の便が上がり、輸送の時間が短縮されました。この橋の登場により、かつてはこんにゃくや葉たばこの栽培が多かったのが、レタスを筆頭にねぎやトマトなど、野菜の生産農家が格段に増えていったのです。首都圏へ新鮮なうちに届けることができるのに最適な立地。坂東市のレタスと、橋の登場は切っても切れない関係にあるのです。
冬の間、色の濃い葉ものを欲していた体も、春の風が吹くにつれ、やわらかな緑でみずみずしい味わいのレタスを求めている自分がいます。今までは、あまりレタスに注目していなかった自分を反省。自分の住まうこの茨城の土地が育むレタスを、もっとじっくり味わおうと思うのでした。
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