畑の主。
はくさいを目にすると、思わずそう呼びたくなるほど、その立派な体躯たるや、ほかの野菜の追随を許さぬ風格です。大きく分けて、秋冬に収穫される秋冬はくさいと、春に収穫される春はくさいに分けられますが、ともに茨城県の収穫量が全国1位です。
平成20年度のデータでいうと、全体の収穫量のうち秋冬はくさいが28%、春はくさいにいたっては38%のシェアというから、はくさいの世界において茨城の存在たるや、思わず茨城県民であるということだけで、私さえ胸を張りたくなります。
県内では八千代町をはじめ、古河市、坂東市など県西地域での栽培が多く、平坦な火山灰土壌で水はけがよいことや、冬季に関していえば日照時間が長いことなどが栽培に適しているといわれています。また、県西地域から都心まで約60kmと近く、収穫してから葉がやわらかく鮮度がよい状態で首都圏まで届けられる立地も、今の産地を支える理由といえそうです。
茨城県での栽培の導入は戦後まもなく。徐々に規模が拡大されていきました。昨今では価格低迷や、生産者が減少する現状もありますが、その反面、1戸あたりの作付面積が拡大しているというのも興味深いところです。
冬の時期に産地を車で走らせると、畑の中で頭部をひもで結んだはくさいがずらりと並んでいる姿を目にします。寒そうに、静かに、だけど堂々とたたずむその姿に、またしても「あ、やはり畑の主だ」と再認識するのです。この頭部を結ぶのには訳があります。1月に、頭縛りといい外葉が広がらないように上部を束ねてひもで結んで状態を維持し、計画的に出荷を行うため。さらに2月から3月上旬にはビニールや寒冷紗で覆って寒さから守るなどの対策を行っているのです。とはいえ、この寒さがおいしさを引き出すのも事実。はくさいをはじめ、野菜は寒くなると凍らないように自身の糖度を上げて凍らないようする自己防衛本能が働きます。どんな時期でも、はくさいのその歯ごたえのよさや、さっぱりとした味は万人に好まれる存在。ですが、寒い時期に収穫されたはくさいの、独特の甘みやうま味は「はくさいは、冬に必ず食べたい」と思わせるのです。
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