笠間クラインガルテンは、ログハウス付農園。開園11年を迎え、すっかり人気も定着し、借主のほとんどが都内や首都近郊からの方です。東日本大震災、原発事故、風評被害と様々な影響が続く茨城。今、いわば他所の住人である皆さんは、茨城で農を行なうことをどう思われているのでしょう。
入所者の一人、新治秀徳さんご夫妻に話を伺うことができました。新治さんは千葉県柏のマンション暮らしで、同園入所2年目の方です。(写真=新治秀徳ご夫妻)
「のびきったホウレンソウたち。かわいそうでした」
まず、震災直後の話を伺うと、「震災直後は、自分の住居などのことなどで手一杯で、やっと来れたのは、4月末。ホウレンソウがのびきっていてかわいそうでした。ハウスの中の崩れより、野菜たちがかわいそうに思えました。原発事故は確かに心配だけれども過度の不安はどうも。せっかくの栽培を台無しにすることはできませんね」と、話してくれました。 新治さんは、同園への入所以来、すっかり「農作」という所作が自分の生活の一部になったとのこと。事態を冷静に判断しながらここでの活動を大切にしたい気持ちが伝わってきました。
「農家の人に話しかける言葉はみつからなかった」
震災後、農家の方とはどんなお話しをされたのかを伺いました。新治さんは、この問いにしばらく間をおかれていました。「正直、まともなことが話せなかったです。話しかけたい気持ちはあっても。結局、顔見知りのイチゴ農家の方に、ただ『大変ですね・・』と。『がんばって』も言えなかった」と話されました。自ら農作を行なうようになって、生産農家や農業のことが間近に感じられているからこそ安直な言葉をかけることができなかったと。胸中でこの地の農業を思いやる気持ちが伝わってきました。
「茨城の野菜はおいしいのだから」
「けっこう茨城県産の野菜を見かけ、抵抗なく買っていらっしゃるような気がします。しかし、風評被害云々というより、茨城の野菜は本当においしいのだから、はっきりわかりやすくアピールしたい」と話され、そして、新治さんの話はこの笠間の話に及び、「ここから見る景色、この里山が本当に好きになってね。こんなにいい場所だということをわかってほしいですね」と、続けてくれました。
JA茨城中央の小沼泰彦所長さんの話
同園を笠間市から委託管理運営を任されているJA茨城中央の小沼泰彦所長に話を伺うことができました。
「確かに風評被害は収まりを見せず、私たちのJA管内でも厳しさは続いています。それでも、ここでの活動を気に入ってくれている入所者のみなさんの姿をみていると元気になれます。笠間クラインガルテンの活動も元気な茨城野菜の情報発信の一つとなりたい」とお話ししていただきました。
取材前、首都圏からこのクラインガルテンを借りているみなさんが、もっと茨城のおかれている風評等を気にされているのではという危惧はなくなっていました。入所されている方々が、自ら畑と向かい、土をいじり作物を育てることを生活のサイクルとしているからこそであると思えました。