刺身のつまと呼ばれるダイコンの千切りは、魚の刺身には欠かせない名脇役です。この分野で市場を席巻しているのが笠間市にあるナガタフーズです。同社は加工技術を生かして、おろしダイコンを使ったドレッシングや干しイモから派生したイモようかん、スイートポテトなどまでさまざまな商品開発を行い、農業生産法人としてユニークな取り組みを行っています。同社の若き経営者・永田修一さんにお話をお聞きしました。
かつては養豚、やがてダイコンへ
-ナガタフーズさんの歴史はどのようなものですか?
永田さん 私のところでは昔は養豚をやっていました。米や野菜もやっていましたが、冬場仕事がないので干しイモを始めたのです。父親の良夫社長は市場に勤めていた関係で、兼業農家になっていましたが、「刺身のつまを産業化できないか」と平成4年に法人化して、ダイコンの加工を始めました。私どもでは通年で16ヘクタールの畑でダイコンを栽培していますが、現在は県内の契約農家のほか岩手、青森といったところからも産地リレーしてダイコンを仕入れています。
-刺身のつまというのはどのようにして出来るのでしょう。
永田さん いわゆる普通に洗って、皮向いて、桂剝きの状態にし、水にさらして、脱水して袋詰めということを一連の作業で行います。ダイコンの品種は繊維がしっかりしていて、パリッとする食感が大切です。約6000トンを出荷しています。
ダイコンを幅広く活用
-ダイコン以外のつま用野菜も扱われるのですか?
永田さん もちろん刺身のつまに必要なニンジンや大葉、パセリ、小菊なども扱っています。刺身のつまは野菜というより魚と一緒に扱われるので、太田市場のほか築地をはじめ水戸や船橋など魚を扱う市場へ出荷しています。
-刺身のつま以外にも加工品はあるのですか?
永田さん ダイコンを利用したものとしては粗挽きにした冷凍ダイコンおろしのほかに、キューピーさんにOEMで作ってもらっているダイコンおろしを使ったドレッシングも作っています。「大根百笑」というネーミングで、和風味、おろし玉ねぎ味、中華風味、香味野菜のポン酢風味の4種類を販売しています。刺身のつまは食べられなくて捨てられてしまう現実があります。そこで何とか食べてもらえる用にと開発しました。県内では京成百貨店や茨城空港、笠間工芸の丘やみずほの村市場などで販売しています。この材料は県内産のダイコンだけを使っています。
干しイモから加工品まで
ーイモの栽培加工も行っているのですね。
永田さん 干しイモは昔からやっていました。今でも天日干しで作っていて冬場が作業の本番です。私が実家に戻ってから、イモを作った加工品も作ろうと考えてイモの加工にも取り組みました。
-修一さん自身はどのようなご経歴なのでしょう。
永田さん 私はサッカーをやっていて、農業とは無縁の大学で経営学を学びました。大学卒業後みかど農産(株)に入社して、その後、ドレッシングやウズラの卵、アンチョビなどを製造する光和デリカと言う会社で加工技術を学びました。ナガタフーズに入社したのは平成18年4月からですが、干しイモばかりではなくイモの加工品を作ろうと、それまでの刺身のつまの工場とは別に第2工場を作りイモの加工品に取り組みました。
大手スーパーなど販路広がる
-イモの加工品は修一さんの発案なのですね!
永田さん イモを利用して加工品として取り組んだのが「業務用イモようかん」と「スイートポテト」です。業務用は甘味屋さん、和食、レストラン向けのイモようかんです。「スイートポテト」は紅あずまとムラサキイモを使ったものもあり2種類の味が楽しめます。主に大手スーパー向けの商品ですが、ちょっとした贈答品としても使えるようにパッケージデザインなども自分で考えて、製造しています。
-今後も新しい商品開発を目指しているのですか?
永田さん 地元の笠間市、特に旧岩間町は日本一のクリの産地です。スイートポテトのクリバージョンを考えています。来年の秋にはクリを使った新商品を作りたいと思っています。折角の地元産の作物があるのですから、どんどん利用していきたいと考えています。
【取材録】
社長は刺身のつまという農業と漁業のニッチな必需品に目を付け、同社の礎を築かれましたが、今は作物の生産を担当しています。
息子の永田修一さんは学卒後、大手食品メーカーで加工技術を学び、現在のナガタフーズ発展の大きな戦力となっています。それだけにとどまらず新たな商品開発で、農業という1次産業から加工・販売まで含めた6次産業へ。来年には発売されるというクリの新商品がどのような姿を見せるのか。今から楽しみです。