干しイモの原材料となるイモは「タマユタカ」という品種が主流ですが、飛田さんが選抜を繰り返して開発した「トビタタマユタカT・T34」は今や100軒近くの農家が採用する人気苗となっています。肉質が良く、太くて、収穫量も多いこのイモがひたちなか市の干しイモ産業を支えていると言っても過言ではないでしょう。干しイモ生産に情熱を注ぐ飛田さんの農園を訪れてみました。
「トビタタマユタカT・T34」 産地の人気品種となる
-飛田さんの農園の干しイモはどのような特長があるのでしょうか?
飛田さん 自分で苗も作っていてタマユタカの選抜を重ねていって「トビタタマユタカT・T34」という品種を作りました。これは県の普及センターから「是非分けてほしい」と言われて提供することになりました。今では100軒ほどがこの苗を使っていて、使った農家から「良かった」と言われます。タマユタカ以外にもタマオトメ、ニンジンイモ、ムラサキイモなど7品種を栽培していますので、12月から2月末までいろいろな干しイモを楽しめます。
-イモはどのように栽培されるのでしょうか?
飛田さん この辺は海が近く、梅雨時にも冷たい海風が吹きます。芋の苗は根を張るまで非常にデリケートで寒さに枯れてしまいます。このため、うちでは麦間(ばっかん)栽培という昔ながらの栽培方法をとっています。収穫前の麦の間にイモ苗を植えることで寒さを防ぎます。また、収穫後の麦ワラも地力に役立ち、連作障害にも役立ちます。でも今ではこの農法をやっているのはわずかになってしまいました。麦の価格も安いというのもあるのでしょうね。
-麦も作っていて、年間を通して畑作業が続くのですね。
飛田さん 麦はビール用の二条大麦と食べる分だけの小麦を作っています。この小麦を使って、以前から二人の夢だったパンを焼きたいと願っていて、それが「夢叶うパン」として完成しました。ユメシホウという小麦でこれはパンの街のつくばから種子を送ってもらって栽培しています。製粉した小麦粉は直売所でも販売していています。
-直売所は干しイモシーズンばかりではないのですか?
飛田さん 東日本大震災後、農家として何かやりたいね…夫婦でと話していて年間を通して野菜などを売る直売所を6月から開設しました。「とびたのうえん・やさい畑マルシェ」といって毎月第1・3土曜日の午後2時から5時頃まで開いています。小麦粉や季節の野菜などを買っていただき、ストレスフリーな暮らしを楽しんでもらいたいですね。
-干しイモばかりではなくいろいろな農業にも挑戦しているのですね。
飛田さん 米作りもやっていますが、うちのやり方は本当に古いやり方をやっているだけです。干しイモは機械で乾燥できるけれど、うちではじっくり天日干ししています。干しイモの箱を開けるとお日様の香りを感じられます。干しイモはリスクもあり本当に難しいですが、今年の出来は「柔らかくて、透明感があって甘い」とうことで、期待できるでしょう。
【取材録】
干しイモ作りは冬だけの季節労働と思いきや、飛田さんの所では麦間栽培で麦も栽培。パン用ユメシホウ小麦粉で干しイモをいれたパンを焼くと美味しいですよ-と奥様の裕子さん。麦とイモとの畑は連作障害を防ぎ、収穫後はパンとしてのコラボも楽しめる。飛田さんの開発した種イモは多くの農家で使われていますが、そんなことより栽培・収穫を心底楽しんでいる夫婦の姿が印象的でした。
>ホームページ http://www.geocities.co.jp/hoshiimomura/