多彩なブドウを提供。いろいろな味が楽しめると好評
-水戸のこんな場所にぶどう園があるなんて、はじめて知りました。
早川さん 私の祖先は水戸藩士だったようで、ここで普段は農業をしてイザお城で何かことあれば、千波湖畔から舟でお城に駆け付ける役目を持っていたようです。この千波では戦前から「千波ナシ」と言われるように「ナシ」の果樹栽培が行われていました。ブドウ栽培を始めたのは昭和32年ごろからで、私の父親からです。果樹園としては私が3代目になります。
-この辺はブドウ栽培には向いているのですか?
早川さん この周辺の土地は肥えすぎていてブドウ栽培には向きません。そのため苗を囲って無理に痩せた土壌にして育てています。また、収穫しやすいように一列になるようにせん定しています。ブドウは欧州系とアメリカ系とあるのですが、うちでは欧州系を中心に20品種そろえています。多品種を栽培するのはいろんな味を楽しんでもらうためですが、私自身、趣味として栽培していることもあります。
-ここのブドウはビニールに包まれていますね。
早川さん これはお客さまがブドウの種類を判別することができるようにとの配慮です。それぞれの木には品種と値段を書いて表示していますので、取りすぎて予算を上回ることのないような目安になります。幼稚園児などもブドウ狩りにきますが、収入には結びつつきません。でも食育の一環として考え収穫する喜びを味わって欲しいですね。ブドウは市価で6000円する品種もありますが、ここでは半値以下で収穫することができます。
-千波湖を望み、住宅街の中でブドウ園を経営するのは大変じゃないですか。
早川さん バブル期には土地買収の攻勢にも遭いました。でも、ここは先祖代々の土地です。ここには古墳もあるんです。石棺があり、貝塚もあるんです。この前は大学の先生が発掘調査しましたが、石器なども出土して、古くから人が住んでいた場所なのです。水戸市が立てた石碑もあり古墳目当てで来る方もいます。来園者にはネットの口コミで来る方もおります。
-住宅街の中の果樹園、いろんな工夫もありそうですが。
早川さん シートやネットで覆うことで害虫予防にもしていますが、この中で生まれたセミはこの中で一生を過ごすのです。エコファーマーとしての認証も得ているので農薬などご近所の迷惑にならないようにしています。ナシなども苗から接ぎ木をしたりして種類を増やしています。害虫を捕獲する装置も設置しています。
【取材録】
早川ぶどう園の入り口には小さな小川が流れています。その流れはびっくりするほど透明で清らかなものでした。これが千波湖へ流れ込んでいるのです。アオコの発生など千波湖は汚れているイメージが強いのですが、水戸駅南口からわずか15分ほどのこの地に、こんな場所があるのかと感慨深いものがありました。水と緑を実感できる小さな幸せを水戸のど真ん中で味わえるとは。早川さんの存在は水戸市民の誇りといえるものです。
早川ぶどう園
TEL.029-241-6157
水戸市千波町657