東京土産の人形焼きや都内のスイーツの名店・「キャトル」、トップレベルの寿司店「すきや橋次郎」など名だたるグルメ店が愛用する「奥久慈卵」。「ふるさとの玉子」として生産される奥久慈卵の約6割5分は県外で消費されるという、県内鶏卵のトップブランドとして確固たる地位を確保しています。どのようにして販路を広げ、ブランドを確立したのでしょうか。
奥久慈卵ブランド化への道
-奥久慈というとシャモが有名ですが、卵もそれに負けないブランドですね。
組合 奥久慈というとシャモが知名度は高いかと思います。それでシャモの卵と勘違いされるのですが、私どもは昭和55年に、10軒ほどの養鶏農家によって組合を設立しました。当初はバラックで始まった鶏舎も増設を重ね、現在は外気開放鶏舎や加工工場やパッキングセンターなどを備えた設備を整えています。
-緒川の環境はニワトリの飼育に合っているのですか。
組合 ニワトリは人間と同じでストレスを与えない環境が必要です。もちろん気候、鶏舎、水などにより卵が小さかったり、殻が薄かったりしますが、どれだけストレスを与えず、良いエサを与えるか、意外に単純なものです。しかし、安定した品質を保つためにはきちんと管理することが必要です。
徹底した生産管理
-外部の人間が入るにもかなり衛生面で厳しいものがありますね。
組合 鳥インフルエンザに関しては細心の注意を払い、徹底した衛生管理を行っています。ここは敷地のすぐ隣は栃木県になってしまい、あまり人も立ち入らないという立地でもあります。隔離されてはいますが、事務所や工場内の立ち入りには制限させてもらっています。
-品質を保つための工夫はあるのですか。
組合 先代の組合長の根本正文はニワトリのスペシャリストです。ニワトリは120日経った「緒川スペック」に合ったものを購入し、約300日で集卵のピークを迎 えます。450日で廃鶏となります。午前中に集卵し、午後には工場のラインで洗卵、選別を行いサイズ別などにパック詰めして出荷します。傷やシミのあるものはネットに入れて近隣で直売します。また、割れたものなどは加工に回す工夫もしています。
奥久慈卵品質と特徴
-奥久慈卵は他の鶏卵とはどのように違うのですか。
組合 「コクがあって臭みが少ない」と言われます。また、卵は黄身の濃いのが好まれますが、人形焼きなどではスポンジの色を出すのにちょうど言いと言われます。卵は生地に色が出てしまいますが、色が濃過ぎず使い勝手が良いようです。
-最近では加工品としても販売していますね。
組合 緒川フーズという関連会社を平成12年に設立して厚焼き卵を製造しています。卵の消費は夏場には落ち込みます。大手寿司チェーン店で使ってもらっているほか、温泉卵なども販売しています。厚焼き卵はアッパー層にも人気の商品です。
販路を広げブランド確立
-県外、主に都内有名店で使われるようになったのは?
組合 人形焼きの錦糸町の山七食品さんとは20年前からの付き合いですが、平成6年ごろから都内での販路を広げていきました。やはり業界内での口コミの力で広 がっていったのが大きいですね。スイーツの「キャトル」さんやお寿司の「すきや橋次郎」さん、などに使ってもらって14、5年になります。ほかにラーメンの「青葉」さんやスーパーでもカスミ、CGCグループなどを主力に出荷しています。
-どのような味が受けているのでしょう。
組合 私どもは昔、農家の庭先で飼われていたニワトリが産んだコクのある卵を今によみがえらせたいと思って取り組んでいます。業務用ばかりではなく、一般消費者にも喜ばれる品質を提供していきたいですね。
【取材録】
農作物生産者の基本は、いかにおいしいものを提供するかです。奥久慈卵の基本は昔のニワトリの産んだ卵の再生でした。人の舌は「昔食べたおいしい味を忘れない」ということを奥久慈卵は証明しました。さらに高品質なものを安定的に供給できる体制が整うことで、得意先も安心して受給できるのです。担当者は「口コミで広がった」と言いますが、その評判を生むためには単純で当たり前の努力の積み重ねが必要のようです。
>ホームページ http://www.okukujiran.com/