合併前の常陸太田市の旧市域の山裾には緑豊かなブドウ畑が広がっています。常陸太田産のブドウはさまざまな品種が楽しめ、9月10月の最盛期には県内外から多くのリピーターで各直売所は賑わいを見せます。その中でも、最近販売が開始された新品種の「常陸青龍」は、期待のニューヒーローです。品種改良にも積極的に取り組む、本多技研さんに常陸太田のブドウについてうかがいました。
歴史が浅い常陸太田のブドウ栽培
-常陸太田市でのブドウ栽培はいつごろから始まったのですか?
本多さん 約30年前から、タバコ栽培からブドウへと転作する農家が増えました。最初はどこも巨峰から始まりました。ブドウは栽培も大変ですが、ここは土壌や気候が栽培に適していました。私のところでは祖父の勇吉がブドウに取り組み、父親の正剛と続いて私で3代目となります。
-気候風土が合っていたのですね。
本多さん 土壌に礫が多くて、ミネラル、カルシウムが多く含まれています。ブドウは植えてから収穫までに5年掛かります。収穫時期は限られますが、1年を通して手間の掛かる仕事です。傾斜地での作業で、立ったままの作業も多く、丹精込めなければおいしいブドウはできませんね。
通年作業が欠かせない大変な労力
-年間を通してどのような作業をされているのですか?
本多さん 冬に落葉したら枝のせん定を行います。春には新しい梢を誘引して雨よけのビニール掛けなどをします。花が咲くころには花の整形を行います。やがて実を付けても摘房といって実のついた房のうち約7分の1から10分の1くらいまで落としてしまいます。でも実を着けた房でも栄養が十分に回るように粒を抜くのです。そして一つひとつ袋かけをして、収穫を待つのです。
-気の遠くなる作業ですね。
本多さん ほかにも病害虫から守るために施肥や草刈りなど毎日行う作業があります。それでも天候不順などにより収穫が保証されるものではありません。
一般には出回らないブランドブドウ
-常陸太田産のブドウは市場には出回らないですね。
本多さん ほとんどが直売で売れてしまいます。市場に出回るのはほんの0.1%ぐらいです。都内のホテルオークラや百貨店の三越ぐらいには出していますが、ここに来なくては買えないのです。お客さまに来ていただいて、買ってもらうことですべて売り尽くしてしまいます。
-それはすごい!
本多さん 大体夏のお盆のころから10月中旬で終わります。短い期間ですが来てくれるお客さまが楽しんでいただけるのが、栽培農家は何よりうれしい。ブドウ農家同士でお客さまのためのジャズコンサートなどもやったこともありました。
新品種「常陸青龍」の登場
-新しい品種ができたとうかがいましたが。
本多さん 「常陸青龍」ですね。私の祖父の勇吉が巨峰の種を毎年何十粒もまいて苗木を育て、その中から生まれた品種です。ブドウは品種改良されており、いろんな遺伝子が表に出てきます。たいていは原種に近くなるようですが、「常陸青龍」は柔らかい甘みが特徴です。常陸太田のオリジナルブランドです。
-他の産地との差別化が図れますね。
本多さん 現在30品種のブドウを栽培していますが、「常陸青龍」は巨峰より糖度が高く、酸味が少ないという特徴を持っています。露地よりもハウスでの栽培のほうが品質が良く、必ず人気を得るはずです。今年デビューの品種ですが、期待は高まっています。
【取材録】
常陸太田のブドウの歴史は本多巨峰園との歩みをひとつにしているようです。本多技研さんの祖父・勇吉さんのまいた種が今になって見事に結実しました。常陸太田のブドウが全国に誇れるブランド「常陸青龍」。このブドウが一世風靡する時期も近いようです。でも、常陸太田に足を運ばなければ買えない-ひと房のブドウは、ブドウ以外にも地元へ多くの経済効果ももたらしそうです。
■本多巨峰園
茨城県常陸太田市増井町1051
Tel / Fax. 0294-72-1520
>ホームページ
http://nttbj.itp.ne.jp/0294721520/index.html?clk105&kok11&svc2303&Media_catepda&wpJ08&wtJ08&w
>JA茨城みずほ常陸太田ぶどう部会 http://www.hitachiohtakyoho.jp/