茨城県鉾田市は、言わずと知れたメロンの一大産地。生産量は全国一を誇り、近年はイバラキングのようなオリジナル品種も誕生しています。その鉾田市で、親子2代でメロンを栽培しているのが、今回取材させていただいた方波見農園です。
方波見農園では、イバラキング、アンデス、クインシー、ゆうか、そして方波見農園のオリジナル品種でもある「むつみレッド(別称:ラブソング、なだろうレッド)」の春メロンを5品種と、夏にはアールスメロン、夏から秋にかけては中玉トマトを栽培しています。長年培ってきた施肥や温度管理などの農業技術を駆使して作られたメロンは、芳醇な香りと濃厚な味わいが特徴的で「方波見メロン」としてブランド化にも成功。多くの固定ファンを掴んでいます。「お客様に美味しいメロンを提供するのが目的」と、メロン作りに情熱を燃やす、方波見洋一(ひろかず)さんにお話を聞かせていただきました。
農法にこだわらず、美味しいメロンを追求する
―メロンを栽培する上での「こだわり」はありますか?
方波見さん 消費者に「美味しい」と喜んでもらえるものを作ることが一番のこだわりで、栽培方法に特にこだわりはありません。
農法にこだわるよりも、化学肥料であれ、有機肥料であれ、美味しく作るのに何が必要かが重要です。美味しさの追求という終わりのない挑戦をしています。
強いて言うならば、他のメロンの生産者と比べると、ハウスの換気はこまめにしています。午前中にメロンを温めて傷を出し、午後からは風にさらして乾かすことで、綺麗なネットを作っています。また、こまめに換気をすることで、糖度と熟度のバランスを整えています。
―方波見メロンの味の特徴は何でしょうか?
方波見さん 堆肥などの有機肥料を使っているので、濃厚な味がします。メロンの甘味には、ブドウ糖、果糖、蔗糖(しょとう)という3種類があるのですが、更にそれに「旨味」を加えるためにミネラル分などを肥料として土に入れて、バランス良い土作りを心がけています。
まだ目標とするメロン作りの過程の段階ですが、色々と工夫はしているので、味も香りも良いものが作れていると思います。
オリジナル品種「むつみレッド」
―オリジナル品種である「むつみレッド」の特徴は?
方波見さん 普通の赤肉メロンよりも、果肉の量が多くて甘味が濃く、カロチン臭が少ない点です。赤肉メロンは、バランスを崩すとカロチン臭がしますが、むつみレッドはそれが少ないのが特徴です。収穫後4日くらいの、歯ごたえの残るものが特に美味しいです。
―消費者への直販もしているとのことですが、消費者の反応はいかがですか?
方波見さん 県内だけでなく全国各地から注文が来ています。お陰様でリピーターの方も年々増えている状況です。お客様同士のつながりで広がっているようです。それは大変嬉しいことですが、同時にプレッシャーも感じています。他の生産者が作ったものを含め、去年のお客様が食べた味の記憶に勝たなければ、毎年購入していただくことはできません。期待を裏切らずに、期待を超えるようなメロンを作っていかないといけませんから。
人に求められるメロンを作り続ける
―方波見農園の今後のビジョンをお聞かせください。
方波見さん 消費者に「こういうものを作ってくれないか?」と求められて、それを自分が仕入れた知識や技術で形にできれば一番嬉しいですね。積み重ねた知識の体現ができて、それが収入になれば、これほど嬉しいことはありません。
それと並行して、方波見農園としてブランド力アップを図っていければと思っています。
今後、農家として生き残っていくには「あそこのメロンでなければダメだ」と言われるくらいのブランド力が必要です。その為にも、自分たちの力だけではなく、人の力を借りて、うちで作るメロンの魅力をどんどん広めていきたいです。良いものを作り続けていれば、周りは放って置いてくれないと思います。そのような、人に求められるような存在でありたいです。
【取材録】
メロンは、収穫日から食べる日までの日数で食感が変わってきます。早く食べれば固く、遅く食べれば柔らかい。どちらが美味しいと言えるものではなく、その判断は食べる人の味覚に委ねられます。
方波見さんの「知識を体現するのが面白い」という言葉が印象に残りました。学んだことを実践して、形にする。これは、生産者だけでなく、消費者にも当てはまるのではないかと。美味しいものを美味しく食べるタイミングを知ること。食べ物が農家さんの手によってどのように作られているかを知ること。食べ物について知り、消費という形で実践する。そうすれば、食べものがより美味しく感じられ、「食べる」という行為そのものが、今よりも楽しく、有意義になるのでは。
■方波見農園
鉾田市安房1947
>方波見農園ホームページ