いばらきの生産者

HOMETOPICSTOPICS01 > 高島農園

 スイカが店頭に並び始めると、季節の移り変わりを感じます。大きなスイカを割って縁側に集まり家族みんなでスイカを食べるシーンが思い浮かびますが、近年は、核家族世帯が増えあまり見かけなくなった光景の一つかもしれません。
スイカの生産地は北から南まで広い範囲に及びます。その中で収穫量が多いのは、熊本県、千葉県、山形県とならびます。原産地はアフリカ南部のカラハリ砂漠周辺。強い光と降水量がわずかな環境下で発達してきました。実際、スイカは強い光と通気性、乾燥を好むそうです。鉾田市の大地は水はけがよく、肥沃な土壌。産出量日本一のメロンをはじめ、さまざまな作物が栽培されています。スイカもその一つですが、現在、鉾田市でスイカを主として生産しているのは、わずか4軒から5軒のみです。その限られた生産者のひとり、高島農園の代表、高島修一さんを訪ねました。

スイカがおいしい時期は収穫が始まる5月から6月初め

−高島農園さんで生産しているスイカの品種にはどんなものがありますか?また、鉾田でつくるスイカにはどんな特徴がありますか?

高島さん:
 当園で生産している主力品種は、大玉が「貴ひかり」、小玉のスイカが「スイートキッズ」、表面が黒い「あんみつ姫」、黄色の品種「黄美姫」です。大玉と小玉を合わせて毎年大体1万5千個を出荷しています。今年は「ぷちっと」という種ごと食べられる新しい品種を試作してみました。身が固いものや柔らかめのもの、シャリ感が強いものなど、スイカにもいろいろな品種がありますが、カット売りが主流となった最近は、それに合った品種を選んでいます。販売しているのは、水戸の市場や地元の直売所、ふるさと納税の返礼品などです。最近は都内からもご注文いただくようになりました。

 スイカの栽培は、12月の頭にスイカと台木の種まきから始まります。台木には、カンピョウやトウガンを用い、接木して連作に強い苗を作ります。1月の中旬くらいにそれらを定植させます。そこから”ツル引き”といってツルを伸ばしていきます。伸びたツルを何回か切除しながら、スイカが実る元気のよいツルになるように整え伸ばしていきます。そこから大体1ヶ月半、3月後半ごろから交配に入ります。
交配してから早い品種だと53日から55日くらいで収穫できる大きさになります。5月のゴールデンウィークに一度収穫します。基本的にうちは2番果は獲りません。一度獲ったら終わりです。1株に3~4個なるんですけど、形がいいのを残してあとは摘果します。鉾田ではスイカの旬は5月なんです。収穫が始まる5月から6月初めのスイカがいちばんおいしい時期です。この時期は糖度も全然違います。旬のおいしさを一度味わった人はまた買いに来てくれます。8月上旬でスイカの収穫は終わりになります。

 収穫が終わった土は、太陽熱処理や消毒をするなど、来季のための土づくりをしていきます。9月、10月に堆肥を入れて寝かせたり、雨水をかけるのも大事な作業です。鉾田は水はけがよく、寒暖差がしっかりある気候なので、そういう環境がよりスイカをおいしくしてくれるのだと思います。

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スイカ一つひとつの状態に気を配り安定したおいしさを

−2022年は異常な暑さでした。気候の変動によってどんな影響がありますか?また安定した品質を保つためにどんなことに気をつけていますか?

高島さん:
 異常に暑いと、収穫する前に根っこが暑さで枯れてしまいます。2022年も前半は涼しかったので十分に完熟させられたのですが、後半は梅雨明けした途端に気温が上がり、一気に根っこがやられてしまいました。暑い時期は通常、”切り戻し”といって、1回収穫したところのツルを切ってそこから横芽を張らせて、2回目を穫るんですけど、そうすると根っこが張っている分、夏場に強いものができます。そうやって暑い時期に合わせた方法を取ります。また、日差しが強いと表面が焼けてしますので遮光ネットで影をつくってなるべく涼しい環境を作ってあげたりもします。それでも2022年は35度以上ありましたから売り物にならなくなってしまったものもたくさんありました。

 さきほどお伝えしたように、当園では、3月後半ごろから交配に入ります。暖かくなると花粉は風に飛ばされて交配できてしまうんですけど、寒いと花粉の出が悪く交配できないこともあります。少ない花粉でも手作業なら確実につけることができます。手で交配させることで交配からの日数が分かるので、陽の当たっていない面を「玉直し」をしたり、収穫のタイミングも確実に把握できるようになります。昔はミツバチを入れて交配していた時期もあったみたいですが、今は手作業で行なっています。

−高島農園を引き継がれたそうですね。今と昔でスイカの需要はどのように変わってきたでしょうか?

高島さん:
 当園は私で4代目になります。スイカの栽培が始まったのは、おじいさんの代からなので50年以上になります。元々は親戚の家でスイカを生産していました。近くにスイカ作りの名人がいて、その人から教わったみたいです。スイカ農園の大場さんも親戚です。今はみんな辞めてしまって、残っているのがうちと大場さんのところだけです。
 家族経営なので今でも両親には手伝ってもらっています。18歳から始めて、24年になります。妻は元々保育士だったのですが、今では一緒にスイカ作りを手伝ってもらっています。

 始めた頃は、1個で売る時代でしたので、本来のスイカよりもう少し小さめのサイズで柔らかいものが主流でした。今はカット売りが主流なので大きくて肉質が硬めの品種が好まれています。市場などカット売りがほとんどですが、直売所では一個売りもしています。当園に直接買いにくる人もいます。一度買いに来てくれた人は、「おいしい!」と毎年足を運んでくれています。
 家でも普段からスイカはよく食べます。子どもがプール遊びしているときもその場でスイカをパッと切って、子どもたちは水着のまま食べています。下の子が幼稚園で七夕の短冊に「パパみたいなスイカを作る」と書いてくれたのは嬉しかったですね。

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【取材録】

高島農園さんへ訪れた時に印象的だったのが代表の高島修一さんの笑顔と、家族と共にある農園の姿でした。一つひとつ手作業で行う交配など作業の大変さを微塵も感じさせない笑顔、奥様とのやりとり。そしてお話を伺っていると、常にいいものがあれば試したり取り入れたり、日々、向上心を持ちつつ作業されているのだなと思いました。そして、何よりも驚いたのが旬が5月だということです。鉾田では、5月が旬であり、旬の時期のスイカは糖度も高くおいしいとのこと。私たちが食について知ることで、旬のおいしいものが身近になり生活が豊かになる、農家さんにも近くなる、そう感じた取材でした。

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