いばらきの生産者

HOMETOPICSTOPICS01 > 山野井洋蘭

花の中でもひときわ豪華な洋蘭。たった一輪でも、抜群の存在感を放ちます。青果物とは違い、花きはその産まれを語ることはありません。洋蘭の中でもカトレア一筋で栽培をしている生産者が常総市にいます。山野井洋蘭は2012年1月に埼玉支社を立ち上げ、栽培面積日本一のカトレア専門農場になりました。

 

今も昔も、カトレア

-喜仁さんで二代目だそうですが、先代がカトレア栽培を始めたのはなぜでしょう。

山野井さん 元々は米農家なんだよね。米は今も作っているんだけど、親父がほかのものも作りたがって、この辺りでは珍しくりんごも栽培していて。ひょんな親父が洋蘭に興味を持って、面白がってアメリカから苗を取り寄せて栽培を始めたのが1972年、70坪から始めたんだ。当時は、この地域一帯で減反の動きがあって、米の代替として選んだのが洋蘭、その中でもカトレアだったわけ。洋蘭は色々な品種があるけれど、その頃は胡蝶蘭の人気が高くて、カトレアを栽培している人は珍しかったよ。

空気を吸うように、栽培を学ぶ

-最初から継ごうと考えていたのですか。

山野井さん うちの親父、変わった人でね。子供のころから仕事を手伝わすというか、自分の仕事に俺を巻き込む人だったの。だって、小学生の頃の誕生日プレゼントがトラクターだよ。これで俺に作業しろって言うの。子供の頃から親父の仕事を脇で見るというより、気づくと俺が作業をしていて、学生の頃から年配の人ばかり集まるような会議にも親父の代わりに行かされたりして。若いからってかわいがってもらっていて、ほかの仕事に就こうなんて考えたこともなかった。親父が50代という若さで急に亡くなったんだけど、昔から仕事をさせてもらっていたおかげで、なんとかそのまま仕事を続けることができたんだと思う。今思えば、感謝、本当にその一言に尽きるね。

丁寧で緻密な作業がカトレアの花を咲かす

-洋蘭は高価な花の代名詞でもありますが、やはり栽培に手間がかかるのでしょうか。

山野井さん カトレアは花が咲くまで10年もかかるの。しかも温度、湿度、日射量などの変化に本当に敏感。この管理を間違えば、もし花が咲いても思うような色や大きさにはならない。ガラスハウスでの施設栽培なんだけど、温度管理も一定ではなく朝夕、日中。その日の天候によっても微調整もしないといけないしね。何よりも、カトレアはウイルスに弱いんだよ。ウイルスフリーの苗を使っているけど、完全に防ぎきれるものではないから、たった一本花や葉を切っただけのハサミも、毎回消毒をして滅菌。ウイルスにやられていないか、ひと鉢ひと鉢確認し、水もひと鉢ごとで手作業。栽培の手間がかかることを話したら夜になっちゃうよ!

カトレアの山野井から、洋蘭の山野井へ

-今後、どのようにしていきたいと考えていますか。

山野井さん 高級なイメージがあるからか、婚礼や祝い事のときに贈ったり、自家用に購入するとしても年配の方がやっぱり多い。でも本当は、もっとたくさんの人に愛されて、色々な場所で飾ってほしいんだよね。単独ではなくアレンジとして使ったり、カトレアのある日常を提案していきたいと思って。今は、ピンク系の大輪が専門だけど、カラフルなもの、逆にシックな色合いのもの、オリジナルの品種を作るなどしてカトレア以外の洋蘭も出していきたいと思っているよ。

【取材録】

わっはっはと豪快に笑うその笑顔とは対照的に、作業は緻密そのもの。施設の温度管理も過去10年の詳細に書かれた栽培記録を元に、現在の形が出来上がっているそうです。話の途中途中に冗談を交えながら、その直後に栽培に関して話すその視線は真剣で、鋭く、カトレアと真っ向勝負に立ち向かっている姿に、ただただ感服の敬を払いたくなります。

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